
【四 アジア太平洋の世紀を開く外交・安全保障政策】
1(アジア太平洋の世紀と日本の役割)
日本の再生は、豊かで安定したアジア太平洋地域なくして、あり得ません。
アジア太平洋の世紀がはらむ「リスク」は、既存の秩序が変動する過程で地域の不安定さが増し、安全保障の先行きが不透明になっていることです。
また、発展途上の金融市場、環境汚染や食料・エネルギーの逼迫(ひっぱく)、日本を追いかける形で進む高齢化といったこの地域で散見される課題も、安定した成長を阻む要因です。
こうした課題の解決に、日本の技術や知見に熱いまなざしが向けられています。
わが国の、地政学的な恵みを最大限にいかし、アジア太平洋地域が安定と繁栄を享受できるように貢献していかなければなりません。
これは、世界全体にとっての課題であり、かつ、わが国の国益を実現するための最大の戦略目標です。
貿易・投資の自由化、エネルギー・環境制約の克服、テロ対策や大量破壊兵器の拡散防止、海洋航行の自由の確保、平和維持や紛争予防といった安全保障面での課題、さらには、自由と民主主義、法の支配といった共通の「価値」の確認など、多様性あふれるアジア太平洋地域において、共通の原則や具体的なルールを率先して提案し、志を同じくする国と手を携えながら、地域の安定と繁栄に向けて戦略的に対応していきます。
アジア太平洋自由貿易圏、いわゆるFTAAP構想の実現を主導し、高いレベルでの経済連携を通じて自由な貿易投資のルールづくりを主導します。
日韓・日豪交渉を推進し、日中韓やASEANを中心とした広域経済連携の早期交渉開始を目指すとともに、環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPP協定への交渉参加に向けた関係国との協議を進めていきます。