
菅首相の所信表明演説No4
(「強い経済」の実現)
まず、「強い経済」の実現です。
強い経済を実現するためには、安定した内需と外需を創造し、富が広く循環する経済構造を築く必要があります。
その鍵が、「課題解決型」の国家戦略です。
それぞれの課題に正面から向き合い、その処方箋を提示することにより、新たな需要と雇用の創造を目指します。
この考え方に立ち、「新成長戦略」では、「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」、「アジア経済」、「観光・地域」を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として「科学・技術」と「雇用・人材」に関する戦略を実施することとしています。
第一の「グリーン・イノベーション」には、二〇二〇年における温室効果ガスの二十五パーセント削減目標を掲げた地球温暖化対策も含まれます。
その他に、生物多様性の維持や、人間に不可欠な「水」に係わる産業など、期待される分野は数多く存在し、その向こうには巨大な需要が広がっています。
運輸部門や生活関連部門、原子力産業を含むエネルギー部門、さらには、まちづくりの分野で新技術の開発や新事業の展開が期待されます。
第二は、「ライフ・イノベーション」による健康大国の実現です。
子育ての安心や老後の健康の願いを叶える処方箋を示すことが、新たな価値を産み、雇用を創り出します。
第三は、「アジア経済戦略」です。
アジアの多くの地域では、都市化や工業化、それに伴う環境問題や少子化・高齢化も懸念されています。
また、鉄道、道路、電力、水道などは、今後整備が必要な社会資本です。
これらの課題を解決するモデルを提示することで、アジア市場の新たな需要に応えることができます。
その為海外との人的交流の強化、ハブ機能を強化するインフラ整備や規制改革を進めます。
第四の「観光立国・地域活性化戦略」のうち、観光は、文化遺産や自然環境を活かして振興します。
農林水産業を地域の中核産業として発展させることにより、食料自給率の向上も期待されます。
低炭素社会で新たな役割も期待される林業は、戦後植林された樹木が生長しており、路網整備等の支援により林業再生を期待できる好機にあります。
戸別所得補償制度の導入を始めとする農林水産行政は、こうした観点に立って進めます。
口蹄疫の拡大を止めるよう政府は、迅速な初動対応や感染拡大の阻止に総力を挙げるとともに、影響を受けた方々の生活支援・経営再建対策に万全を期します。
地域の活性化に向け、真に必要な社会資本整備については、民間の知恵と資金を活用して戦略的に進めるとともに、意欲あふれる中小企業を応援します。
第五の「科学・技術立国戦略」の下で、我が国が培ってきた科学・技術力を増強します。
効果的・効率的な技術開発を促進するための規制改革や支援体制の見直しを進めます。
我が国の未来を担う若者が夢を抱いて科学の道を選べるような教育環境を整備するとともに、世界中から優れた研究者を惹きつける研究環境の整備を進めます。
イノベーション促進の基盤となる知的財産や情報通信技術の利活用も促進します。
第六の「雇用・人材戦略」により、成長分野を担う人材の育成を推進します。
労働人口の減少という制約を跳ね返すため、若者や女性、高齢者の就業率向上を目指します。
非正規労働者の正規雇用化を含めた雇用の安定確保、産業構造の変化に対応した成長分野を中心とする実践的な能力育成の推進、ディーセント・ワーク、すなわち、人間らしい働きがいのある仕事の実現を目指します。
女性の能力を発揮する機会を増やす環境を抜本的に整備し、「男女共同参画社会」の実現を推進します。
人材は成長の原動力です。
教育、スポーツ、文化など様々な分野で、国民一人ひとりの能力を高めることにより、厚みのある人材層を形成します。
こうした具体策を盛り込んだ「新成長戦略」の最終的とりまとめを今月中に公表し、官民を挙げて「強い経済」の実現を図り、二〇二〇年度までの年平均で、名目三パーセント、実質二パーセントを上回る経済成長を目指します。
当面はデフレからの脱却を喫緊の課題と位置づけ、日本銀行と一体となって、強力かつ総合的な政策努力を行います。
がんばれ ニッポン!!!