
6)世界に新たな価値を発信する日本
(文化融合の国、日本)
古来より、日本は、大陸や朝鮮半島からこの海を渡った人々を通じて多様な文化や技術を吸収し、独自の文化と融合させて豊かな文化をはぐくんできました。
近現代の日本も和魂洋才という言葉の通り、東洋と西洋の文化を融合させ、欧米先進諸国へのキャッチアップを実現しました。
こうした文化の共存と融合こそが、新たな価値を生み出す源泉であり、それを可能にする柔軟性こそが日本の強さです。
自然環境との共生の思想や、木石にも魂が宿るといった伝統的な価値観は大切にしつつも、新たな文化交流、その根幹となる人的交流に積極的に取り組み、懸け橋としての日本、新しい価値や文化を生み出し、世界に発信する日本を目指していこうではありませんか。
(東アジア共同体のあり方)
昨年の所信表明演説で、私は、東アジア共同体構想を提唱いたしました。
アジアにおいて、数千年にわたる文化交流の歴史を発展させ、いのちを守るための協力を深化させる、「いのちと文化」の共同体を築き上げたい。
この構想の実現のためには、さまざまな分野で国と国との信頼関係を積み重ねていくことが必要です。
その意味で、揺るぎない日米同盟は、その重要性に変わりがないどころか、東アジア共同体の形成の前提条件として欠くことができないものです。
初代常任議長を選出し、ますます統合を深化させる欧州連合とは、開かれた共同体のあり方を、共に追求していきたいと思います。
(いのちと文化の共同体)
東アジア共同体の実現に向けての具体策として、特に強調したいのは、いのちを守るための協力、そして、文化面での交流の強化です。
地震、台風、津波などの自然災害は、アジアの人々が直面している最大の脅威の一つです。過去の教訓を正しく伝え、次の災害に備える防災文化を日本は培ってきました。これをアジア全域に普及させるため、日本の経験や知識を活用した人材育成に力を入れてまいります。
新型インフルエンザをはじめとするさまざまな情報を各国が共有し、協力しながら対応できる体制を構築していきます。
人道支援のため米国が中心となって実施している「パシフィック・パートナーシップ」に、今年から海上自衛隊の輸送艦を派遣し、太平洋・東南アジア地域における医療支援や人材交流に貢献してまいります。
(人的交流の飛躍的充実)
昨年の12月、私はインドネシアとインドを訪問いたしました。
いずれの国でも、国民間での文化交流事業を活性化させ、特に次世代を担う若者が、国境を超えて、教育・文化、ボランティアなどの面で交流を深めることに極めて大きな期待がありました。
この期待に応えるために、今後5年間で、アジア各国を中心に10万人を超える青少年を日本に招くなど、アジアにおける人的交流を大幅に拡充すると共に、域内の各国言語・文化の専門家を、相互に飛躍的に増加させることにより、東アジア共同体の中核を担える人材を育成してまいります。
APECの枠組みも、今年の議長として、充実強化に努めてまいります。
(日米同盟の深化)
今年、日米安保条約の改定から50年の節目を迎えました。
激動の半世紀にあって、日米安全保障体制は、質的には変化を遂げつつも、わが国の国防のみならず、アジア、そして世界の平和と繁栄にとって欠くことのできない存在でありました。
私とオバマ大統領は、日米安保条約改定50周年を機に、日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させることを表明しました。
わが国が提出し、昨年12月の国連総会において採択された「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」には、米国が初めて共同提案国として名を連ねました。
「核のない世界」の実現に向け、日米が協調して取り組む意義は極めて大きいと考えます。
普天間基地移設問題については、米国との同盟関係を基軸として、わが国、そしてアジアの平和を確保しながら、沖縄に暮らす方々の長年にわたる大変なご負担を少しでも軽くしていくためにどのような解決策が最善か、沖縄基地問題検討委員会で精力的に議論し、政府として本年5月末までに具体的な移設先を決定することといたします。
気候変動の問題については、地球環境問題とエネルギー安全保障とを一体的に解決するための技術協力や共同実証実験、研究者交流を日米で行うことを合意しています。
日米同盟全体を、両国のみならずアジア太平洋地域、さらには世界の平和と繁栄に資するものとしてさらに発展させてまいります。
(アジア太平洋地域における2国間関係)
アジア太平洋地域における信頼関係の輪を広げるため、日中間の戦略的互恵関係をより充実させてまいります。
日韓関係の、世紀をまたいだ大きな節目の今年、過去の負の歴史に目を背けることなく、これからの100年を見据え、真に未来志向の友好関係を強化してまいります。
ロシアとは、北方領土問題を解決すべく取り組むとともに、アジア太平洋地域におけるパートナーとして協力を強化します。
北朝鮮の拉致、核、ミサイルといった諸問題を包括的に解決した上で、不幸な過去を清算し、日朝国交正常化を実現する。
具体的な行動を北朝鮮から引き出すべく、6者会合をはじめ関係国と一層緊密に連携してまいります。
拉致問題については、新たに設置した拉致問題対策本部のもと、すべての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、政府の総力を挙げて最大限の努力を尽くしてまいります。
(貧困や紛争、災害からいのちを救う支援)
飢餓や貧困にあえぐ人々、故郷に戻れない生活を余儀なくされる難民の人々、国際的テロで犠牲になった人々、自然災害で住む家を失った人々、こうした人々のいのちを救うために、日本に何ができるのか、そして何が求められているのか。
今回のハイチ地震の惨禍に対し、わが国は、国連ハイチ安定化ミッションへの自衛隊の派遣と約7000万ドルにのぼる緊急・復興支援を表明しました。
国際社会の声なき声にも耳を澄まし、国連をはじめとする国際機関や主要国と密接に連携し、困難の克服と復興を支援してまいります。
頑張れ ニッポン!!!